こころ
金と恋。それは、人が一番惑わされてしまうものなのか。夏目漱石は、そんな主題をズブリと我々に突きつけます。文学作品「こころ」を読んでそう思いました。なぜだか突然小説が無性に読みたくなり、夏目漱石でも読んでみようと本屋さんで文庫本を物色。漱石の作品は、新潮文庫と岩波文庫の両方から出ており、まずどちらを買おうか悩みました。表紙のデザインは岩波文庫の方が好みだったのですが、本文の文字組が新潮文庫の方が圧倒的に読みやすかったので、そちらにしました。値段も362円と安いし、文庫本はこうでなくては。しかしまあなんとも救いの無いお話ですね...。漱石作品はかなり前に「坊ちゃん」を読んで以来久しぶりに読みまして、勝手にもっとさわやかな印象を抱いておりました。でも思い返せば、「坊ちゃん」も主人公のキャラクターは明るかったものの、ストーリー自体は決してさわやかではなかったですね。この「こころ」は人間のエゴイズムをテーマとし書かれています。物語前半は、“私”の眼を通して、登場人物の “先生” についての伏線が張りまくられるのと同時に、“私”の父親と先生の対比が主軸となるのですが、全ては物語後半の長い“先生”の告白文の為にあったのだなと思いました。いやはやこれは凄い。100年前も今も、人間の内面に持つ“我執”は、全く変わらないのですね...。うーん、面白かった。次の漱石文学は何を読もうかな。
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