2006/06/14

金閣寺



三島由紀夫の「金閣寺」を読みました。何年か前から寺等の建築物にも興味を持ち、昨年は京都に行き金閣寺を見てきたのも手伝って、この本を読まねばと思っていたのですが、いかんせん他の本を読むのに忙しく、読めていなかったのです。この前、夏目漱石を読んだので、なんとなく次は昭和の文豪を読もうと思い立ち、彼の「金閣寺」を選んだのです。いや面白かった。この本は、昭和25年に実際に起きた、金閣寺全焼事件を題材に、その犯人である金閣寺の僧である青年を主人公に、告白形式で綴った物語であります。どんな事柄にも当然、そのプロセスを経て行われるのであって、彼が金閣寺を燃やすに至るまでを克明に書かれております。ドモリというハンデを背負い、その事が常に主人公に対して悩ませる種となる。美しい有偽子に心を奪われるもかなわず、その死を願い、かなう場面は強烈でした。己と対称的な美に対する幻想を抱き、ついには破壊しようとする主人公。自分を受け入れるが、全くタイプの違う二人の友。自殺。老師。父。母に対する憎しみ。そして軍服。お茶碗。着物。女。乳房。このシーンは、究極のエロティシズムです。こんな話を書けるなんて...三島は凄いなぁ。主人公の告白は、三島の告白とも読めてきました。これは誰しもが、この主人公にどこかしらに何か共感を覚えるのではないでしょうか。三島の表現者としての真剣さを感じる。うーん、屈折している。新潮文庫。552円。