2006/07/01

漱石の孫


夏目房之介の「漱石の孫」を読んだ。著者夏目房之介さんは漫画の評論・研究で有名な方で、自身も漫画をお書きになる。そして文豪夏目漱石の孫でもあるのです。...といっても、この本で語られていますが、ご本人にとっては、子供の頃や若い頃、その事が相当コンプレックスとなっていたようです。僕自身も、この人が漱石の孫であることを後から知りました。夏目房之介さんを知ったのは、週刊朝日のデキゴトロジーの連載で、毎週親父が買ってくる週刊朝日のこのページを読むのを楽しみにしておりました。テレビ番組の為、夏目房之介さんが英国ロンドンの、かつて夏目漱石が下宿していた部屋を取材した折、そこで受けた複雑な感情が、この本を書くにきっかけになったそうです。50歳を過ぎ、徐々に漱石を受け入れる事が出来たそうですが、本人にとっては、漱石は自分が生まれる30年以上も前に亡くなっている為、周りの反応に反して、いかんともし難いものがあったようです。むしろその漱石とは対称的な夏目房之介の父親に対して、かなりのコンプレックスがあったようですね。そしていつもその背後に浮かぶ夏目漱石の存在が、父と対称的で、どちらかというと夏目房之介さんは漱石さんに近いものを感じずにはいられなかったのではなかろうか。ふーむ。新潮文庫。476円。