ヴィヨンの妻
「斜陽」に続き、太宰治の短編集「ヴィヨンの妻」を読みました。ここに収められている短編作品は、ほぼ彼の晩年の作品でしめられており、この時期に書かれた「人間失格」、「斜陽」の長編作品と並び、ますますもって死の色が濃く出ている作品ばかりで、非常に興味深く読めました。とくに表題作「ヴィヨンの妻」と「おさん」は、太宰治お得意の女性の告白形式で書かれ、妻からの視点で夫(太宰自身?)に対する期待と失望、人生に対する楽観と悲観をえがき、とくに興味深かったです。冒頭の「親友交歓」以外は、どれもある意味、太宰の遺書のような作品です。太宰自身ギリギリのところだったのでしょうか。これらの作品を書いた後、太宰は自分の小説通り、愛人と入水自殺してしまいます。『家庭の幸福は諸悪のもと。』と結論づけた太宰に、人が生きるという行為にやり切れなさを感じさせます。うーん、暗いなぁ...。しかしまぎれもなくこれらのお話は、読んでいて面白かったです。どこまでいっても太宰治は全身作家だっのでしょう。新潮文庫。362円(税別)。
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